狙われてますっ!
なんだ、汐音も頼まれてコンパに出ただけだったのか。
勇気を出してメッセージを送ってみてよかった、と求はバーでスマホを見ながら、ホッとしていた。
実は全然ホッとできる状況ではなかったのだが、そんなことは求にはわからない。
安心した求はスマホをポケットにしまい、武志に、
「今日はもう帰るよ」
と言った。
「そうか。
明日、汐音さんとデートだったな。
頑張れよ~」
俺は、もうちょっと呑んでいく、という武志に笑顔で手を振られる。
デートっていうか……。
おむすびのお礼のお礼におごってくれると言っているだけなんだが。
お礼のお礼。
お礼のお礼のお礼……とつづいていってしまって、切りどきがわからなくなるのは、日本人にありがちな、ちょっと困った習慣だが。
今だけは、このままずっと続いていくといいな、と思ってしまう。