狙われてますっ!




 汐音も一次会で呑み会を抜け、家に帰っていた。

 明日、寝不足の顔にならないようにだ。

 渡真利は上手いこと、普段出会わない部署の男性社員と仲良くなったようで、二次会にも行くようだった。

 金曜日、一度、家に帰って着替えた汐音は、戸締りをして出て行きかけては、また戻り、鏡で格好がおかしくないか、何度もチェックしていた。

 すると、
「もうコンビニに着いてるぞ」
と求から入ってくる。

 し、しまったっ、と汐音は慌てる。

 急いで近くのコンビニに走って行った。

 アパートまで迎えに来ると言ってくれたのだが。

 いやいや、一応、秘密の任務中ですからね、と汐音は思う。

 加倉井さんに家を知られたくないというより、アパートの近くで加倉井さんと居るところを敵に見られて――

「いや、敵って誰だ?」

 加倉井さんが危険な目に遭ってはいけない、などと妄想してしまうからだ、と、

「お前、ただ派遣社員として入って、普通に働いてるだけだろ。
 中の人間関係報告してるだけで」
といちいち渡真利からツッコミが入りそうなことを考えていた。
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