狙われてますっ!
大きな窓ガラスから夕暮れの庭園が見渡せる部屋は美しく整えられていて、次々現れる料理に、もう汐音は死んでいた。
……払えないっ、絶対にっ。
なにも楽しめないっ、と思っていたのだが、食べ進み、呑み進むうちに。
まあいいか、と思いはじめていた。
一生かけて払っていこう、そのくらい美味しい、と思う。
汐音の頭の中では、此処を出た瞬間に、
「料金払えませんでしたね」
とサングラスに黒いスーツ姿の怪しい人たちが現れ、汐音を拉致《らち》していた。
「どうした。
悟り切った顔をして……」
と求に問われ、
「あっ、いえっ。
地下工場で一生働かされそうだけど美味しいなって」
と慌てて言ってしまう。