竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
 問いかけるジェラールに、ミレイナは答えない。けれど、つぶらな瞳を見ていると、そうに違いないと確信めいた予感がした。

「やはり、俺にはお前しかいない」

 ジェラールはミレイナを抱き上げる。
 小さな体を腕に抱き優しく撫でると、不思議と心が落ち着く。

 竜王妃の適性は、礼儀作法や教養の深さだけではない。最も求められるのは、竜王に心の安寧を与えられるかどうかだ。

 竜王に即位すると、元々生まれ持った魔法の力がさらに強力になる。
 感情が昂ぶれば嵐が起こり、逆に心が安定していると不思議と国全体の疫病や災害が減る。これは竜王となった者だけの特別な力だった。
 それ故、竜王妃に最も求められるのは、竜王に癒しと心の安寧を与えられる資質だった。

「俺にはお前以上の者が現れるとは、到底思えない。現れてほしいとも思わない」

 ジェラールはソファーに座ると、膝に乗せたミレイナに語りかける。
 このままミレイナが戻らなかったらどうなるだろう。きっと、一時的に静かになっている周囲がまた「早くお妃候補を」と言い出すだろう。

 だが──。
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