片桐兄妹の言うことにゃ
父の時計を褒めてくれた一人目。
「今日はね、ロールパンとアンパンとシナモンロール」
「りんごのやつ無いの?」
「アップルパイは売り切れ」
「ざんねーん」
唇を尖らせながら微笑む。宛ら天使のよう。
いや、本物の姉のようだ。
「パン屋でバイトも良いねえ」
「まどちゃんの京料理は時給良いでしょ」
まあそうなんだけど、と円香は肩を竦める。
「藍はバイト?」
「うん。今日は居酒屋だった気がする」
家のカレンダーを思い出す。お互いのバイトの予定が書き込まれているのだ。
商店街を抜け、アパートに戻った。