片桐兄妹の言うことにゃ

鞄を一旦そこに置き、燐は声の主の方へ向く。

「もしかして堕ろした?」

最初に、燐に彼氏を盗られたと宣った女だった。

「……は?」
「あんた妊娠したから来てなかったんでしょ?」

噂に尾鰭どころか背鰭や胸鰭までついているとは。

久々に学校に来て、いきなり馬鹿な話を聞いて、それから何故か千治のことを思い出した。

そして、胸の奥でふつふつと沸いていたものが、爆発した。

もう学校を辞めるのだ。何に気を遣わなくても良い。そもそも、何に今まで気を遣っていた? きちんと生きるために? そんなことに何の意味がある?

< 43 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop