片桐兄妹の言うことにゃ
机の中に手を入れると、入れっぱなしになっていたノートの表紙が破かれていた。
そしてまたひとつ、思い出した。
学校指定のジャージ。弁償してもらわないと。
「あんたのオトコさあ、全然大したことなかったよね」
ふふ、と笑ってみせる。笑い方は円香に似せた。
「……は?」
「ほら、あんたの彼氏だった? あれ違うっけ、遊ばれてた子の一人だっけ? まあどうでも良いけど。本当大したことない奴で、すぐ捨てたけど」
机に寄りかかっていた女の顔が少し青ざめ、赤くなり始める。
ちなみに燐はこの女の名前も、その男の顔すら知らない。