蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 夕飯の支度と言ってもそのほとんどは使用人の希子(きこ)さんがやってくれているので、私はその仕上げをするだけなのです。時計を見て時間を確認しながらスープを温めて、柚瑠木(ゆるぎ)さんがインターフォンを鳴らすのを待ちます。
 聖壱(せいいち)さんの話していたこと、私が聞いたら柚瑠木さんは話してくれるでしょうか?今まで何度か聞こうとすると、柚瑠木さんにうまく(かわ)されていました。
 ですがこんな状態を続けていても、聖壱さんの言っていた「柚瑠木さんと向き合う」事にはならないはず。

「聖壱さんも香津美(かつみ)さんも私なら出来るって言ってくれました。だから、頑張らなくては。」

 ……柚瑠木さんのために出来る事を、精一杯。この契約結婚を承諾した時に、私はそう決めたのですから。
 静かな部屋に響くインターフォンの音、私は少し緊張しながらもいつも通りドアを開けて「おかえりなさい」と柚瑠木さんに微笑みます。

 「……ただいま帰りました。」

 なぜか表情の硬い彼から鞄と上着を受け取ると、先に座って待っていてくださいと伝えました。
 夕食の時間はいつも私の話に相槌を打ちながら聞いてくれていた柚瑠木さんですが、今日は何だか様子がおかしくて……

「今日は香津美さんと話をしていると、聖壱さんが紅茶を淹れてくださって。それで……」

 それでも話を続けようとした私の手首を、いつの間にか柚瑠木さんが掴んでいて。その眼にジッと見つめられてしまい、戸惑っていると……

「聖壱から聞きました、月菜(つきな)さんが僕の事を心配している。お前が《《あの事》》を話せないのなら、俺から月菜さんに話してやると……貴女は聖壱からどんな話を聞いたんですか?」

 
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