蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


「小柄で色白、持ち物は白クマのマスコット……聞いていた通りだわ。あのね月菜さん、私の名前は狭山(さやま) 香津美(かつみ)。二階堂 柚瑠木(ゆるぎ)さんの親友の狭山(さやま) 聖壱(せいいち)の妻よ。」 

 女性は怯える私を怖がらせないようにゆっくり優しげな声でそう教えてくれました。

「狭山さんの……奥さん?」

 狭山 聖壱さんとは一度お会いしたことがありました。
 柚瑠木さんが私に紹介してくれたお仕事の仲間の方で、幼馴染なのだとお聞きしました。とても明るくて自信に満ち溢れている男性だったのを覚えています。
 この綺麗な女性があの狭山さんの奥さんなのですね、でもなぜ彼女まで攫われたのでしょうか……?

「大丈夫よ、ここは私達が何とかしてみせるから。月菜さんは私の後ろに隠れていてちょうだい。」

 香津美さんは自分の事よりも私の事を心配してくれて、とても優しく接してくれます。
 なんて強い女性なんでしょうか。それに比べて私は、香津美さんにも柚瑠木さんにも迷惑をかけて……

「あの、この事を柚瑠木(ゆるぎ)さん達は……?」

 もし、この事を柚瑠木さんが知ったら、私は彼の妻失格だと思われるのではないでしょうか?不安は大きくなるばかりです。

「心配いらないわ、必ず彼らが何とかしてくれるはずだから。月菜さんは何も心配しなくていいのよ。」

 そう言って香津美さんは私の肩に手を置いて、そっと撫でて少しでも私を安心させようとしてくれたのでした。


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