恋愛アレルギー
あれはあたしが小学校4年生の頃のことだ。


ちょうど咲子も同じクラスだった。


あたしには好きな男の子がいた。


その子はクラス内では目立たず、だけど優しい人だった。


ある日学校に登校したあたしは窓の近くの席に座って文庫本を読んでいる男の子を見つけた。


いつもひとりだけ少し早い時間に来て、本を読んでいるのだ。


名前は田村くんと言う。


その頃には児童書をよく読んでいたあたしは、田村くんが読んでいる本にも興味があった。


毎日どんな本を読んでいるんだろう?


あたしが読んでいる児童書はどれも可愛いイラストが入っているけれど、田村くんが読んでいる本にはイラストが入っていないみたいだ。


サイズも一回り小さくて、その分文字も小さい。


見開き2ページにギッシリと文字が詰まっていて、大人用の本だとわかった。

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