政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
深夜一時。
まだ眠れない。不安は夏樹のことだけじゃないのだ。本当はあと三日だけ待とうと思っていたけど、もう耐えられそうにない。
「ハァ、ハァ」
緊張でひっくり返りそうな息をしながら、私はサイドチェストの中に隠していた薬局の袋を持ち出し、廊下に出てトイレに入った。
ジャーという水洗の音が真っ白な頭をかき乱し、手に持っている検査薬にピンクの線がくっきりと浮き出てくる。
そのままのふらつく足で、夏樹の寝室へ向かった。私から彼の部屋を訪ねるのは初めてだ。
もう、夏樹の顔を見て、声を聞いて、手に触れなければ、不安で不安でしかたない。
「……な、夏樹」
彼は私と同じく、部屋に鍵はかけない。
扉を開けると真っ暗だったが、眠っていた夏樹は私の声にすぐ反応し、「桃香?」と体を起こした。
「夏樹……」
「おい、どうした。大丈夫か」
夜這いだとか言われて茶化されるかと思ったが、私の震えた声に夏樹はすぐにサイドランプを点け、ベッドに座ったまま私の両手を手繰り寄せる。