政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~


◇ ◇ ◇

自宅マンションに戻り、ワンピースのリボンをほどいた。

「すごい喜んでたな、どっちも」

ネクタイを緩めて先にリビングのソファに腰かけた夏樹は、髪をひとつに結い直して忙しくしている私に視線を向ける。

「そうね。無事に伝えられてよかった」

「すごいトントン拍子だ。俺、こんなに幸せでいいのかな。ツンケンしてかわいい奥さんと結婚して、すぐ子どもができて」

嫌みを言われた気がするが、私はとくに取り合わずに「うん」とだけ答えた。食べ過ぎた反動からか今度は少し胃がムカムカして話が入ってこない。
食べても食べなくても、常にどこかに不快感がある。

それをやり過ごすために、綺麗に掃除してある家の隅々をさらに除菌シートで拭き始めた。

「……帰ってきたばかりだろ桃香。少し休んだらどうだ」

「いい。大丈夫」

なんだかよくわからないけど、胃だけじゃなくて気持ちまでムカムカする。
休んでいたら太ってしまう。夏樹に連れられて料亭のご飯を食べちゃったから、動かないといけない。

そうよ、夏樹が私の天ぷらを食べてくれなかったから。出されたらこっちは我慢なんてできないのに。能天気になんでも食べさせて、私の体重管理の邪魔をしたいのかと思ってしまう。
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