政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

「桃香? なんか機嫌悪いの?」

夏樹がソファから立ち上がってちかづいてきたため、私はちょうど入れ違い、彼が座っていたところへコロコロをかける。

「べつに。夏樹が幸せで、妻としてなによりよ」

体の不調についてはなにも知らせていないから、夏樹が呑気でいるのは当たり前だ。それはわかっている。食事の量や時間をコントロールしていれば、私は見た目には元気だろうし。

でも、なぜかこれまで感じたことのないストレスが襲いかかっており、常に頭の血管が切れそうな感覚がある。
そもそも私はこれまで体重を気にしたことがなく、とてつもない食欲に襲われるなどという経験もない。それに、太った自分の見た目に困惑するのも初めてなのだ。

ふくよかになった腰を秘かにつねってみる。三キロ太っただけで、これだ。これから十キロも太ったらどうなるのだろう……いや、この調子じゃ十キロじゃ済まないかも。

夏樹は私を抱くとき、たまにスタイルを褒めることがある。だから私を抱いているのかもしれない。
太ったことや、食欲が抑えられなくなったことなんて、彼には絶対に知られたくない。
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