政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

「なんだよ。桃香は幸せじゃないのか?」

ふいに夏樹の怪訝そうな声が、背後から迫った。
さすがに嫌みな言い方だったとハッとして謝罪しようと振り返ると、驚いたことに彼は目鼻の先にいた。

「わっ……。ええ、幸せよ、そりゃ」

「素直になれよ。お前もいろいろ不安かもしれないけど、ここまできたら開き直って仲良くやっていこうぜ」

「ひゃあっ」

フッと耳に彼の吐息がかかり、艶めいた声が漏れる。
夏樹はたまにこういう意地悪なスキンシップをしてくるが、子作りという名目がなくなった今はめっきり少なくなっていた。久しぶりの接近に、体にピリッとした緊張感が走る。

「な、夏樹、ちょっと……」

彼の瞳が細められ、ゆっくりと唇が近付いてくる。キスは普段、体を繋げる前にしかしないのに。
強張りつつも甘くとろけそうな雰囲気に呑まれ、目の前にある彼のワイシャツの胸板に大人しく埋もれた。
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