政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「ごめんなさい、夏樹……」
彼がここまで取り乱すとは思わなかった。理路整然と言い返され、罵られ、軽蔑されるのだろうと覚悟していたのに。
弱々しく見える彼の背中に手を添えたくなったが、飯田さんの顔が一瞬よぎったため、引っ込めた。
「でも、夏樹はこれで私に囚われる必要がなくなるんだから、よかったじゃない。私、飯田さんとのこと、知ってるのよ」
夏樹は肩をピクリと動かし、手から顔を上げる。
「飯田さんのことってなんだ?」
「……私が倒れた日、寝室で電話してた声を聞いてたし、ついこの間、代わりに来てもらった日の電話のやりとりも聞こえていたんだから」
「そうなのか。……で? それがなんかあった?」
眉を歪めて首をかしげる夏樹を前に、私はついに抑えていた気持ちを爆発させた。
「だから、全部知ってるのよ! 私のことをダメな奥さんだと思ってることも、夏樹が飯田さんと不倫してることも!」
「はあ!? 不倫!?」
夏樹は立ち上がり、ベッドに備え付けられたテーブルに手を着いた。
私もさらに言い返そうとベッドの柵に手をかける。するとその瞬間、お腹の奥から不穏な痛みが押し寄せる。