死にたがりな君と、恋をはじめる
その冷静な黒い瞳に、荒ぶっていた鼓動が、静かになった。





レイは呆れたような顔をして、こちらを見つめる。



思いもよらぬ言葉に、私は放心する。







違う……? 何が? 私は何か、間違っているの……?





いや、違う。私は、間違っていない。



私は、生きていても意味のない人間だ。






何が違うっていうの?



内心私はイライラとしていたけど、レイの次の言葉を静かに待った。







『……奈月さ』



「ん?」





続きを促すと、レイはあはっと眉を寄せて笑った。





え、何で笑ってるの……?




イライラしていることも忘れて首をかしげると、レイはすっと立ち上がり、

パンパンとズボンの汚れを払った。





『ね、奈月』


「え……?」






笑みを含んだ視線をまっすぐに向けられて、私は困惑で声を一つ漏らした。





何……? 何を言うつもり……?


私は、不安でか、ざわざわと騒がしい胸を抑えつけた。
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