死にたがりな君と、恋をはじめる
それからその黒い瞳でこちらを見る。
『奈月の行動を見てたらさ、どうしても死にたい理由が言ってることと矛盾しているように感じてならないんだよね』
「矛盾……?」
レイの言葉に、私は眉をひそめた。
矛盾……? 私の行動と、言いたいことが、矛盾している……?
レイの言葉を理解したとたん、首筋を冷たい汗が流れた。
目を見開いてレイの次の言葉を待っていると、レイは私の様子を見て、ふっと笑った。
『そんな緊張しなくても。奈月って結構小心者?』
「……そんな茶化しいらないから。早く続きを言って」
私が睨むと、レイはますます笑みを濃くして唇を小さく開いた。
『……奈月ってさ。いじめがつらくて、死のうとしたんだよね?』
「そう、だよ」
私は小さくそう呟くと、あの地獄のような日々に思いを寄せた。
教室でもまるで透明人間が入ってきても、確認できないかのように、無視をされて。
少しでも嫌われないように、息を殺して。
挙句の果てに、機嫌の悪い時にはまるでお気に入りのおもちゃをかわいがるかのようになぶられて。
あんな扱いはもうごめんだ。
『……でさ。思ったんだよ』
「え? 何、が?」
レイの言葉に現実に引き戻されて、パチパチと目を瞬かせた。
『奈月ってさ。田中友花と会った時とか、話すときとか、全然怖がってなかったよね?』
「え……うん。だって、怖がってご機嫌を取るなんて、しょうもないかなって……思うから」
私は、状況が呑み込めないままにそう答える。
確かに、私は田中達を怖がったり、ご機嫌を取るために取り入ったりといのは、今までやったことがない。
変なところでプライドが邪魔をして、それがますますいじめを加速させていたのかもしれないけど。
そうわかっても、田中達に屈することができなかったのは考えてみると愚かな行動だったとわかる。