君、思う。[短篇]
「…っ」
涙が次から次へと頬を伝う。
なんて言えば良いか
なんて答えれば良いか
分からない。
浩介は…
浩介の気持ちは…
そんな私を見て健司はふっと笑うと、背を向けて歩き始めた。決して、決して振り返るなんてことはしないでただ真っ直ぐに。
「…健司!」
「じゃあな。」
その声は優しかった。
カツカツカツ…
呆然と立ち尽くす私の方へと、浩介が向ってくる。ゆっくりと、でも確実に私との距離が縮まっていくのが分かった。
「愛莉」
そして、私の名前を呼ぶと、
いつものように…優しく私を抱きしめた。
「ふぇっ…」
その腕がなんだか懐かしくて
私はまた、自然と涙を流す。
「そのまま、俺の話し聞いて?」
ふわっと撫でられた頭。
私はコクンと首を立てに振った。
ぎゅっと私を抱きしめる浩介の腕の強さが、たまらなく愛おしかった。
「まず初めに、愛莉が見た奴は俺の彼女じゃない。」
「で、でも!」
あんなに仲良さ気だったのに!
浩介も笑顔だった…。
「由愛は…」
ズキン。
ほら、浩介が私以外の
女の子、呼び捨てにする。
いままで、そんなことなかったのに。
…親しい証拠でしょ?
自然と浩介の
腕を握る手に力が入った。