君、思う。[短篇]

「なんで気付かねぇかな。」

「…浩介?」


毎朝、私の家に来るのは
幼馴染として、だからじゃないの?

毎日、私を抱きしめるのは
小さい頃の癖だからじゃないの?


「あんなに分かりやすくアプローチしてたのに。」

「だって…っ」



手の届かない人だと思った。
一番近くにいて、それで一番遠い存在だった。



「こうやって抱きしめるのも全部、俺を好きになって欲しくてやってたんだけど。」



そう言いながら
少し私を包む手に力を加えた。



ドキドキドキ
鳴り止まない胸のドキドキ。




「で、俺の作戦の結果はどうだった?」

「そんなの…」


そんなの、分かりきってることじゃない。
私の心はいつだって、同じだった。


「失敗だね。」



私はニコリ、と笑った。
ビクリ、浩介の腕が一瞬脈を打った。



「え…。」

そして見上げた浩介の表情が少し曇った。






失敗。
そう、だって初めから
最初から私の気持ちは…決まってたんだもん。



「…愛莉?」


しゅん、とした顔が可愛くて
私は笑みを漏らす。


「浩介。」


名前を呼ぶと、少し背伸びして
浩介の唇に触れた。




「ずっと前から、好きだったよ。」

「…っ」



私は胸にしまっていた言葉を
浩介に告げた。



言いたくて、言えなかった2文字。



浩介の顔が次第に真っ赤に
染まっていくのが分かった。






いつも、貴方が優位に立ってるんだもの。
たまには、私が先を歩いたって、良いよね?








「くっそ。…気に食わない。」

「え?」

浩介の小さな呟きのあと、
がっちり繋がれた手。


「今日は、僕の家に来ようか?」

「ひっ」


僕、と言ってることと
妙な笑顔に鳥肌が立ったが既に遅し。




「好きだよ。」





耳元でこう言われちゃ、
もう抵抗も出来ないでしょ?



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