🩸狂い切ったヴァンパイア🩸
「ふふっ、可愛い子ねぇ」

「い、いえ、そんなっ……」

こんな綺麗な人が、私のことを可愛いなんて言ってくれるって、余程優しい人なんだろうな。

「私は柊玲奈。玲くんのお母さんよ」

「……へっ?」

玲くんの、お、お母さん……!?

「さっきは、玲くんがごめんなさいね……。あの子、10何年ぶりの人間の血の摂取で、吸いすぎちゃったのよ」

「あっ……だ、大丈夫です……」

そう、だよね……。しょうがない……。

玲くん、初めて会った時、吸った以来、吸ったことないって、言ってたっ……あれ、本当、だったんだ……。

あ、あれ……?なんかおかしいな、今日の朝私、血吸われてなかったっけ……?

ガチャン!!

そんなことを思っていると、部屋のドアが勢いよく開き、玲くんが現れた。

「ひゆ!!」

すごく心配そうに私のことを見てくる玲くんに胸が痛む。

でも、それとともに優しさも伝る。

「大丈夫……?ごめんね、本当に……」

「気にしないで!!全然、元気だよっ?」

そう言って満面の笑みを見せて、両手でガッツポーズをする。

「っ……ありがとう……」

「ううん!」

玲くんにも笑みが戻って、よかった。

「……玲くん、そろそろ儀式よ」

「わかったよ」

儀式……?

「じゃあ行こうか……お姫様」

そう言って、跪いて私の手にキスを落とし、お姫様抱っこをした玲くん。

「ど、どこに……?」

「どこだろうね」

そうとぼける玲くんにむすっとする。

「ふふっ、むすっとしないでよ」

「そう言ってるわりには、嬉しそうじゃんっ……」

すごく嬉しいそうにニヤニヤしてる玲くん。

「いやぁ〜嫌がる姿も、最高に可愛いなって」

「ううっ……そう言うの、いいから……」

嘘だとわかってても、なんだかとっても嬉しい。だからこそ、やめて欲しい。

「……玲様、どうぞ」

縦に長い、白い綺麗なドアを執事さんたちが開けると、そこは、教会のような場所になっていた。

「綺麗っ……」

思わずそんな言葉が溢れる。

「……行くよ」

私はゆっくりと降ろされて、玲くんに手を差し伸ばされる。

なんだかよくわからないけれど、とりあえずその手に自分の手を重ねる。

すると、にっこりと笑みを咲かせてくれた玲くん。

そのまま、赤いカーベットが敷いてある道を歩く。

なんだか、まるで結婚式のようだ。

奥の方まで歩いて行くと、そこには、玲くんのお母さん、玲奈さんと、玲くんによく似た大人っぽい、男性が立っている。

「お父様、お母様、よろしくお願いします」

そう言って、胸に手を当てて深く頭を下げた玲くん。

謎の緊張と、追いつかない頭で身体が硬直している。

すると、玲奈さんがにっこりと微笑んで、私の首筋に手を当てる。

すると、玲くんの噛み跡が浮き出てきた。

これはおそらく、初めて吸われた時の噛み跡だ。

次第に玲奈さんは目を瞑った。

そして、玲奈さんの手からは、赤い光が出ていた。

一体、なにが起きているのかわからない。

しばらく、頭がポーッとしていて、気がつくと、私はふかふかなソファに座っていた。

「あ、あれっ……!?」

「ふふっ、無事、成功したわよ」

そう言って微笑む玲奈さん。

「あ、あの、さ、さっきのは……!?」

「あれは、完全な、婚約の儀式よ。」

「え、えっ……!?」

「首筋、赤い薔薇のマークができてるでしょう?」

そう言われて慌てて視線を首筋に視線を移すと、見事に薔薇のようなマークがついていた。

「あ、あのっ……」

「ふふっ、それが正式な婚約の証。あっ、無理矢理じゃあないからね。噛み跡が10何年もついているのと、色が綺麗についたのも、全て自分の了承があったからよ。真実の愛が、ないとそれはつかないからね」

全くとして、理解は追いつかないけれど、私は、どうやら、玲くんの正式な婚約者になってしまったということだけわかった。

そして、始まる、甘すぎる学園生活が始まるとも知らずに私は、呑気にどうやったら跡が消えるか考えていたのだった。
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