魔王に見初められて…
バン━━!!と中から克樹が出てくる。
「結愛!?」
一瞬で克樹の腕の中に抱き締められた。

「え?克樹?」
「なんで、電話に出ない?
何度もかけたのに!」
苦しい位の力に、なぜか胸が締め付けられた。

「克…樹…?」
「なんかあったのかと思って、心臓が潰れるかと思ったじゃん!」
「ごめんね…お買い物してて、両手…塞がってて……」
「そうだったのか……よかった…」
心の底から安心した表情をする、克樹。
結愛の顔を両手で包み込み、額をくっ付けた。

「でも、そこまで心配しなくても大丈夫だよ」
「それは結愛があんなメールよこすからだろ?」
「え?」

【克樹、忙しいところ電話してごめんね…。
今、引っ越しが終わったよ。なんだか寂しくて、いつ帰ってくるかなって電話しました。
早く会いたいな……なんて(笑)
お仕事、お疲れ様。家で待ってます。結愛】
スマホ画面を見せられた。

「こんな可愛いメールが来て、しかも寂しいなんて言われて…心配するなってのが無理がある」
「あ…ごめんなさい…心配かけて………」
「ううん…荷物持つよ?」
「え?重いから、ダメだよ!」
「フッ…逆だろ?重いから持つの!」
そう言って、少し強引に両手のエコバッグを取る克樹。

「ありがとう」
「当然でしょ?」
「克樹、仕事は終わったの?」
「ううん。まだ途中だよ」
「え!?じゃあ…早く戻らないと!あとは私がするから仕事行って?」
克樹が持ってるエコバッグを取ろうとする、結愛。

「ダーメ!結愛はこっちの手!」
と片手でエコバッグ二つを持ち、反対の手を出した克樹。
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