魔王に見初められて…
冷蔵庫に買ってきた食材などをしまった克樹は、再度仕事に出て行こうと玄関へ。
「じゃあ…行ってくるね!夕食は食べずに帰ってくるから、できれば待っててほしいな…!」
「もちろん!ご飯作って待ってるね!」
ニコッと微笑む。
その結愛の微笑みに、克樹は心臓がまたドクンと大きく波打つ。

「ほんと参ったな……
あまりにも想定外なことばかりで、ペースが乱れる」
「え?ごめんね……私、なにか迷惑……」
「そうじゃなくて……仕事行かずに、結愛と一緒にいたいってこと!
離れたくない……」
「そうだね…
でも克樹、美味しいご飯作って待ってるから!頑張って!」
克樹の頭をポンポンと撫でる。

「フフ…ほんと、想定外だ!
結愛に年下扱いされた……」
「フフ…だって、ほんとは私の方が年上だよ!一応……」
「フッ…そうだったね!」
笑いながら、今度こそ仕事に出た克樹だった。

エントランスに出た、克樹。
「若、どうぞ」
「ん」
先程の結愛への表情から一転して厳しい表情だ。
車に乗り込んだ、克樹が車の天井を見て目を瞑る。

「こんなはずじゃなかったのに……」
結愛に出逢った時から、一気に心を奪われた克樹。
結愛が思う以上に離れたくないと思っていた克樹は、同棲までこぎつけた。
同棲すれば、もっと気持ちが落ち着くと思ってたのに、益々放れられなくなっていた。

「若、車…出しても…よろしいですか…?」
克樹の今までにない状態に、村井も声をかけるのに戸惑う。
「あぁ…
あと、村井。絶対結愛にバレないようにしろよ…!」
「はい、心得てます」
「きっと俺がヤクザだと知ったら、結愛は逃げ出す。
そうなれば、俺はどうなるかわらない━━━━
自分で自分が、恐ろしい……」
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