魔王に見初められて…
そして今は、克樹の上に横になり抱き締められている。
「克樹、重くない?」
「うん…全然……むしろ幸せ…!
結愛、柔らかくて、温かくて、いい匂いする…可愛い…」
「克樹も…温かい……」
二人はしばらく抱き締めあっていた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「結愛~久しぶり~」
「ほんと、久しぶりだね」
そして、高校の時に仲がよかったみんなで、居酒屋に集まっている。

「結愛」
「拓史くん、久しぶり」
「なんか…綺麗になったな…」
「え?そ、そう…かな?」
「フフ…」
「あーまたぁ?」
「フフ…ごめん…!」
拓史は、結愛の元彼でよく結愛をからかって遊んでいた。
拓史からすれば、好きな子を苛める小学生のような気分だが、結愛は傷ついていた。
その小さな傷つきが積もりに募って、別れたと言っても過言ではない。

「もう、いいけど」
「なぁ…彼氏ってどんな奴?」
「私にはもったいない位の人だよ!
カッコよくて、頭もよくて、優しくて、私をまっすぐ見てくれる人だよ」
「そう…今、幸せなんだ?」
「うん!とっても」
ニコッと微笑む、結愛。

「俺のとこに戻って来ない?」
「は?」
「俺はまだ……」
「もう、からかわないでよ…!?」
「違うよ!ほんとに俺は………」

「無理だよ!?私は今、幸せなの!
ごめんなさい……私は彼の…克樹のことが大好きだから!」
拓史をまっすぐ見て、言った結愛。
今まで控え目であまり拓史に意見することがなかった、結愛。
その結愛のその迷いのない瞳に、拓史はもう敵わないと思い、目を伏せた。
「そう…だよな……わかった…」
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