魔王に見初められて…
「え…?ごめんなさい……」
バッと、克樹の顔を見る。
その結愛の頬を両手で包む、克樹。
「そんな可愛いこと言われたら、我慢できないでしょ?
ここでキスしていい?」
「ここでは…ダメだよ……。
恥ずかし…いよ…」
途端に顔が真っ赤になる、結愛。

「その表情……余計にキスしたくなる…」
結愛の口唇をなぞる。
「だめ…お願い…」

「結愛~何してんの~?」
「え…樹理……」
樹理が外に出てきて、声をかけられる。
咄嗟に克樹の服を握る、結愛。

「結愛?どうした?」
そのただならぬ結愛の雰囲気に、克樹は何かを察する。
「結愛、その人誰~?
ヤバい…カッコいい~紹介してよぉ、結愛~」
「え…でも…」
「結愛!帰ろ?」
克樹が結愛の腰を支え、促す。

「ちょっと待ってよ!結愛!!」
結愛の手を掴む、樹理。

━━━━━━━!!!?

一気に克樹の雰囲気が圧迫されたように、黒く澱む。

「離せよ……」
「え……」
結愛と樹理がその克樹の雰囲気を見て、ビクッと身体を震わせる。
「その手だよ……」
「え…あ、の…」
樹理に鋭い目で睨む。
克樹に抱き締められている結愛でさえ、あまりの克樹の恐ろしさで足がガクガク震えている。
樹理はもっと凄まじい恐ろしさだろう。

「3つ……」
「え?」
「3つ数える間に、結愛から手を離せ……
それができなければ、お前のその手を折る…!」
「え……」
「3、2…」
「す、すみません…!」
樹理は数え終わる寸前で、手を離した。

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