魔王に見初められて…
この時断れなかったのは、控え目な性格もあっただろうが、何よりも克樹に既に心を奪われかけていたからだと思う。

「名前は?」
駅近くのベンチに並んで座り、話す二人。
今が夜でよかったと思う、結愛。
だって、顔が真っ赤なのを悟られないから。

「あ、菊野 結愛です」
「結愛」
「はい」
「俺は屋城 克樹。克樹って呼んで?
呼んでみて?」
「え…克、樹くん……」
「はい!ダメー!
“克樹”
はい、もう一回!」
「克…樹」
「んーまぁギリギリ合格かな?
結愛、彼氏は?」
「え?いません」
「じゃあ…俺の女になって!」
「………は?」
「結愛の彼氏になりたい」
「な、なんかの勧誘ですか?これ」
「フッ…!なんでそうなんの?」
「だって、あなたみたいなカッコいい人に告白されるなんて、あり得ないので……」
どうしても目を見れず、少し俯きがちに話す。

「カッコいいか…なんか、嬉しいな…結愛に言われんの。
でもさ、初めてなんだよなぁ。
一目惚れ?っつうのしたのも、自分から欲しいと思ったのも。
これって“運命”じゃね?」

「でもきっと、つり合いませんよ。私達。
私、つまんない女なんで……
引っ込み思案だし……」
「俺は可愛いと思ったけど?」
「え?」
「その赤くなって照れた顔………
可愛いなぁって。あと、結愛だけだし!声かけてくれたのも。
人って冷たいよな?
駅前であんなに人がひしめきあってて、誰も声かけてくんなかった。
まぁ…別にどうでもいいんだけど、結愛が声かけてくれて、スゲー嬉しかったんだよな!」

「あ、それは…どうしても無視できなくて……」
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