魔王に見初められて…
「あの…恥ずかしいから……人前で、抱き締めるのは…」
「え?なんで?
好きなんだから、しょうがないでしょ?」
その場で華乃を簡単に紹介した後、そのまま克樹のお気に入りの場所だと言う高台の公園に連れていかれた。
顔を赤くし、俯きながら小さく抗議する結愛。
そんな姿でさえ、克樹には可愛く見えてしかたがない。
ほんとに年上かと思う程に。

「克樹…は、仕事何してるの?それになんで職場知ってたの?」
「………俺は……不動産会社を経営してるんだ。結愛のことちょっと調べた。ごめんね…」
自分がヤクザの若頭とは言えなかった、克樹。
怖かった……本当のことを言えば退かれるのではないかと。
一瞬で嫌われそうで。

「そうなんだ…じゃあ…社長さん?」
「そう…なるね」
「凄い!私…そんな凄い人と付き合ってるんだ……。
私にはもったいないな……」
「なんで?」
「私、なかなか人に意見とかできなくて、自分に自信なくて……克樹とつり合わないなって…」
「つり合わないのは、俺の方……」
「え?」
「ん?俺、穢れてるし……」
「え……?克樹?」
「………あ、ほらっ!昨日少し話したでしょ?
学生の時暴走族の総長だったんだけど、その時…正直悪いこともしてた。
だから………」
「でも、今は立派に社長さんじゃない!
素敵だと思うよ?」
フワッと笑う、結愛。

それ……反則だろ…?

克樹は無意識に結愛の頬に触れていた。
「え━━━?
ンン……」
そしてそのまま口唇を重ねていた。

克樹も、もう既に囚われていた。

「……ごめん。あまりにも可愛くて、我慢できなかった…」
そう言って、また口唇を奪い今度は深く口づけた、克樹だった。
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