幽霊でも君を愛する
「そういえば、俺の母さんがお前に伝言してくれってさ。」

「??」

「『たまには家に顔出しに来て』
 だってさ。この前弟や妹に勉強教えてただろ、それですっかりお前に懐いてるんだ。俺の両親
 もお節介でさ、一人暮らししてるお前を気にかけてるみたいだぞ。」

「・・・そこら辺は親子だな。」

私と蔵刃は、幼い頃からの付き合いだ。だから互いの家庭事情も、何となく頭に入って来てしまう。でも私にとって、蔵刃の家庭環境は、『私の理想』でもあった。
確かに離婚は悲しい、でも私は『一瞬』で家族を失ってしまった。片方だけでも親がいてくれるのは、とても幸運な事であると思う。
私は3歳の頃に両親を失い、高校卒業まで父方の祖父母に預けられていた。でも衣食住に不満を感じたことは一切なかったから、私はまだ幸せな方だ。
でも、実際に両親がいないというのは、とても寂しい事だ。今は牡丹が一緒に生活してくれるから全然寂しくないけれど、もし彼女が私の側に居てくれなかったら、もうとっくに壊れていた。
いや、彼女だけが私の心を支えているわけではない。こうして、なんだかんだ私に付き合ってくれる、物好きな友人のおかげでもある。
こうして一緒にランチを食べてくれるのも、私には彼しかいない。個人的に彼が外食する様は面白くてつい見入ってしまう。




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