幽霊でも君を愛する
滅多に外食なんてできない蔵刃にとって、只で食事が得られる事が、何よりも幸福なんだろう。その抑えきれない気持ちが、彼の膨らんだ頬を見れば分かる。彼は頼んだカツサンドがテーブルに運ばれるや否や、早速口に放り込んでは、まるで栗鼠の如く頬の中に収納している。
両頬をぷっくりと膨らませている蔵刃を見ていると、つい微笑みが漏れてしまう。だから彼に外食を奢っても、損を感じさせない。奢ってあげた分、喜んでくれるからだ。
・・・こんな事を言ったら嫌味になるとは思うけれど、私は率直に彼の素直な性格が好きなだけだ。彼の様に、『好き』な事を『好き』と、堂々と言えるのは相当凄い事だから。

「・・・あぁ、そういえば此処、『テイクアウト』もできるんだよね。蔵刃弟と妹達の分も買っ
 てあげるよ。」

「マジィ?!! まじで三楼神様すぎるー!!!」

私は財布を持って立ち上がると、蔵刃の弟と妹、そして蔵刃の両親分と、片手の指を曲げて伸ばしてを繰り返し、数を数える。彼の両親を合わせると、8人分だ。

「・・・・・」

私は、そっと小指を立ち上げ、『一人分』追加した。
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