幽霊でも君を愛する
「ただいまぁー!」

「おかえり! 
 今日は割と遅かったね。てっきり授業が終わってすぐに帰って来ると思ってたけど。お昼ご飯
 は? もう食べた?
 朝聞こうと思ったけど、だいぶ大慌てみたいだったから聞けなかったんだけど・・・」

「はい、お土産。」

彼女は紙袋を受け取り、中を覗くと、紙袋から漂う美味しそうな香りに、彼女の目がキラリと光っているのを見受けられた。
もし牡丹が昼食を作っていたなら、彼女の作ってくれた分を夜ご飯に回してもよかった。私と牡丹の2人暮らしだから、食事スケジュールにトラブルが発生しても、どうにでもなる。
でも牡丹にも、たまには外食気分を味わってもらいたい。牡丹は紙袋を高々と持ち上げたまま、リビングへと消えていく。
私は洗面所で手洗いうがいを済ませる、朝バタバタしていたから洗面所がとんでもない光景になっていると思っていたけど、牡丹が綺麗にしてくれたみたいだ。本当に助かる。
まるで寝坊したのが嘘に思える程、綺麗に折り畳まれたベッドとパジャマ。本当、彼女がいなければ私の生活は成り立たないと言っても過言ではない。
彼女は何かと気が利く上に、察しもいい。だから私の作家活動を支えるマネージャーとしても、非常に優秀である。
私が執筆に疲れた時には、飲み物と摘めるお菓子を自然と出してくれるし、決して作品に対して口出ししない。普通の人間よりも有能な気がする。
そんな彼女の努力に応えてあげるのも、彼氏である私にとっては『責務』であり、『義務』である。
彼女とは外食があまりできないから、こうゆう手段を用いるしかない。でも彼女は、「家で食べられる方が気楽でいい」と言ってくれる。
蔵刃と同じく、頬をモチモチと膨らませながら、まだ若干温かみが残っているカツサンドを満面の笑みで満喫していた。
その光景をのんびり見つめる私。『変態』と言われても仕方ないけど、やっぱり美味しそうに食べている人を見ると、どうしても心が引き寄せられてしまう。
彼女が料理本を熟読しているのは、作れるかどうかを吟味する主旨の他に、『美味しそうだから見ている』という理由も相まっているのかもしれない。
現在時刻は1時を過ぎた頃。牡丹にはちょっと遅い昼食になってしまったけれど、午後からは2人きりの時間が満喫できる。
最近は動画チャンネル等の発展もあって、わざわざレンタルしなくても月額を払っていればいくらでも好きなドラマや映画を見られる。外出を極力控えたい私にとってはピッタリなサービスだ。
もう彼女と共に見たドラマや映画は、海外版も含めると数え切れない。それに繰り返し視聴してる作品も合わせると、ネット配信会社にとっては『お得意様』に分類されるのかも。
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