【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
 勝ち誇った顔で見上げてくる男爵令嬢に、取り巻きたちが追従する。

「そんな風に言っては、マリアヴェーラ様がお可哀想よ」
「そうよ。きっとまだ婚約破棄が尾を引いてらして、他の男性とお話できる胸中ではないのでしょう」
「逃げ帰っても仕方がありませんわ」

 キイキイとひびく声の、なんと耳ざわりなこと。
 まるで小屋の屋根裏で鳴くネズミのようだ。

 弁えていないのはどちらか分からせるため、マリアは麗しく微笑んであげた。

「素晴らしい会に呼んでいただいたのですもの。途中で帰ったりいたしませんわ。まだ着ていないドレスがあったので、途中で召し替えようと持たせてきたのです」

 着替えを常備しているのは、アルフレッドの婚約者としての癖である。
 彼は、気まぐれに訪問先を変えるのだ。

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