【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
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 辺境から盗まれた魔晶石を元通りにして魔物から国を守る算段がついたため、レイノルドが騎士を率いて出発する予定はなくなった。
 レンドルム辺境伯はマリアに何度もお礼を告げ、何か困り事があったときには一番に駆けつけると約束して、縄でしばったネリネとクレロを連れて王都を発っていった。

 宮殿でも動きがあった。
 聖女と関わりのあった人物は仕事を解かれ、第二王子周りの体制も見直された。
 側近になる人物は、『聖女や預言を行う人物との関わりがないと表明する。そういった相手とつながりができた場合は即刻処断されることに同意する』という、厳しい宣誓をしなければならなくなった。

 聖女ネリネに心酔していた国王も悔い改め、王妃に対して謝罪を行った。
 魔法の絵の具で汚れたクレロの絵を破棄する代わりに、新たな肖像画を作る予定だ。

 今度の画家は、地道に貴族の依頼をこなしてきた老人で、派手な作風ではないが確かな筆力で信頼できる。
 というのも、彼を紹介したのは他でもないジステッド公爵だ。マリアの肖像画を依頼する相手として、クレロの前に名が上がっていた人物なのである。

 振り返ってみると、クレロは彼自身の見た目の美しさと魔法の絵の具で得た身に余る評判によって、実力が伴わないのに依頼を受けていた。
 一時の流行でわりを食うのは、本来であれば仕事を得られていた秀才だ。

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