7歳の侯爵夫人

14

王都へ向かう馬車の中では、お互いほとんど無言だった。

『セリーヌの手紙』はコンスタンスの俺への元々ゼロに等しかった信頼を打ち砕き、マイナスにまで引き下げた。
なんとか当たり障りのない会話くらいと思ったが、俺は妻であるこの女性と何を話したらいいのかさえ検討がつかない。
俺は、彼女が20通近く俺に書き送ってくれたという手紙を1通しか目にしていないため、話題さえ浮かばなかったのだ。

それに、下手に話題を振れば、手紙が届いていなかったことまで暴露しなくてはならない。
情け無い俺は、ここに至ってまで、義母に翻弄される自分をこれ以上曝け出したくはなかったのだ。

せめて彼女からのプレゼントの手袋をはめて見せたかったが、もう春を感じる季節に冬用の皮の手袋はそぐわない。

相変わらず彼女は背筋をシャンと伸ばし、姿勢よく、窓の外を眺めている。
だが王都に入ると心なしかその横顔が緊張しているのを、俺は感じ取っていた。
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