7歳の侯爵夫人
蜜月、やり直し

1

田園風景を抜け、ヒース侯爵邸の門をくぐると、馬車はまた邸までの長い一本道を走る。

「すごいわ旦那様!侯爵邸はすごく広いのね!……あっ、ほら、見えて来たわ!」

馬車の窓から邸が見え、コンスタンスは目をキラキラさせた。
馬車が停車すると急いで降りようとするから、オレリアンは慌てて手を彼女の腰に回す。

「こらコニー。レディは先に降りちゃダメだよ」
オレリアンがそう耳元で囁くと、コンスタンスは彼を振り返り、戯けた顔を見せた。

「そうだったわ」
馬車を降りる時は紳士が先に降りて、レディに手を差し伸べるべきだと、マナー教育で習ったばかりだったのに。

コンスタンスに頷いて見せると、オレリアンは先に降りて手を差し伸べた。
しかしコンスタンスは馬車の扉から彼に向かって両手を広げた。

「奥様は抱っこをご所望なのかな?」
オレリアンは少し困ったように首を傾げた。
ずっと狭い馬車内で寄り添っていたためか、コンスタンスは夫と触れ合うことに全く抵抗感がなくなっているようである。
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