7歳の侯爵夫人
手を広げて抱っこをせがむ妻に、オレリアンは照れるように少し頰を赤らめ、そしておずおずと両手を差し出した。
所謂(いわゆる)お姫様抱っこで妻を抱き上げると、邸の方へ体を向ける。

邸の玄関の前には、主人夫婦を出迎えるため、使用人たちが勢揃いして立っていた。
その目は皆、あたたかい。
マテオが、使用人たちが今のコンスタンスを見て驚かないように、そしてそんな使用人たちを見てコンスタンスが悲しまないように、あらかじめ今の状態を伝えておいたのである。

元々使用人たちは皆優しい侯爵夫人を慕っていたため、どんな状態の彼女でも受け入れる覚悟でいた。
いつだって毅然としていた侯爵夫人が夫に甘えている姿に驚きはするものの、とにかく彼女が無事で、2人仲良く自領に帰って来たことを心から歓迎していた。

それに、驚くと言えば…。
使用人たちは今まで仕えてきて、オレリアンのあんな嬉しそうな顔は見たことがない。
時々領地を訪れる若い主人は怖い人ではないが、いつも難しい顔をして、使用人たちに心を開くこともなく、また王都へ戻ってしまっていた。

だが今、いかにも愛おしそうに妻を抱き上げ輝かんばかりの笑顔を向ける主人は、恋する若者そのものだ。
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