7歳の侯爵夫人
だが、長年の帝王教育とお妃教育は、少なからず2人を変えていったようである。
特にコンスタンスからは幼い頃の弾けるような笑顔を取り去り、好奇心でキラキラ輝く瞳を奪っていった。
元来素直な彼女は、『妃はこうあるもの』という前提でなされる教育を疑うこともなく吸収したのであろう。

流れるような美しい所作に、凛とした立ち姿。
慈愛のこもった瞳と、優雅に微笑む口元。
正しく未来の王妃に相応しい姿であるが、フィリップはこの婚約者に何か物足りないものを感じ始めていた。

彼女が国のために、自分のために変わってきたのはわかっている。
だが教育を終える16歳の頃には、コンスタンスはかつてフィリップが好きだった彼女とは違っていたのである。

贅沢な思いを抱いているのはわかっているし、やはり彼女のことは大切な、唯一の女性だとは思っている。
だが以前のように浮き立つような想いは影を潜め、そのうちお茶に誘うのも間遠になっていた。
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