7歳の侯爵夫人
「殿下。ヒース侯爵はコンスタンス様の記憶が無いのをいいことに、自分に都合がいいように記憶を書き換えているのではありませんか?」
ノルドの言葉に、フィリップは
「そうだな」
と頷いた。
「ヒース侯爵夫妻が結婚以来ずっと冷たい関係だったのは明らかです。そもそも、コンスタンス様があのようになられたのは全てヒース侯爵のせいだと思われます。このままだなどと…、許せません」
そう言ってノルドは唇を噛んだ。

ノルドは密かにルーデル公爵令嬢コンスタンスに憧れていた。
いや、彼だけではない。
美しく賢いコンスタンスに憧れる貴族の子弟は多かったはず。
皆、フィリップ王太子の婚約者であるがゆえに心に秘めるのみだったのだ。

本当はノルドだって、フィリップとの婚約が解消されたコンスタンスを自分の妻に望みたかった。
心の底から欲しいと思った。
だが、出来なかった。
自分にはすでに婚約者がいたからである。

貴族の子女は小さい頃から婚約者がいることが多い。
だから自分だけではなく、多くの男がノルドと同じように涙を飲んだと思われる。

だからー。
ノルドは余計に許せなかった。
皆が憧れる公爵令嬢を簡単に手に入れながら、粗略に扱うヒース侯爵のことが。
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