7歳の侯爵夫人
そうして1ヶ月かけて、コンスタンスは少しだけ顔を上げた。
周りを見回せば、家族や使用人たちが皆気遣ってくれていて、皆にどれだけ心配をかけていたのだろうと今更ながら申し訳なく思う。

そして、部屋の窓辺に飾られている一輪の花にも気づいた。
それは、毎日変わるようだ。

そしてコンスタンスはリアにたずね、それが毎日ヒース侯爵オレリアンから贈られるものだと知った。
この1ヶ月、存在さえ忘れていた夫の名を、初めて認識したのである。

まだ、彼に会う心のゆとりはない。
夫と言われても、コンスタンスにとっては時々見かける近衛騎士で、言葉も交わしたことがない、全く未知の男であったのだから。

金色の髪に蒼い瞳の、容姿の整った男性であったとは記憶している。
背が高く凜として、騎士姿で立つ姿は美しくもあったように思う。

だが、彼に対して特別な思いは全く湧いてこなかった。
この先も、彼を夫として受け入れ、愛する日が来るかはわからない。

両親も兄も、急かすことなく、いつまででも、コンスタンスが望む限りルーデル公爵邸にいていいと言う。
お妃教育で忙しかった頃はなかなか甘やかしてやれなかったから、これからたくさん甘えていいんだよ、と言う。
だからしばらくは、その言葉に甘えようと思う。

ただ、もう少し心の傷が癒えたら、夫という男性に会おうとは思う。
こうして毎日花を贈ってくれる彼を放置しているのはさすがに申し訳ないと思うし、いつまでも自分に縛り付けておくのも可哀想だ。

そう。
彼と会って、これからのことを話さなくてはいけないのだろうから。
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