7歳の侯爵夫人

7

「あれ?今日は寄らないのか?」
ダレルは、ルーデル公爵邸前を馬に乗ったまま素通りする主人に声をかけた。

この2ヶ月、毎日律儀に花を買い妻に贈っていたオレリアンが、今日は花屋にも寄らないし、公爵邸も素通りしている。
だが、職場から真っ直ぐ帰るつもりなら公爵邸前を通るのは遠回りだ。
花屋の前でも逡巡していた主人を目にしていたし、ダレルはわざと明るい調子で声をかけた。

しかし主人はダレルの声が聞こえているのか聞こえていないのか、振り返りもしないし歩みも止めない。
ダレルはそっとため息をつくと、あとは黙って主人の後について行った。
< 225 / 342 >

この作品をシェア

pagetop