7歳の侯爵夫人
しかし次の日も、その次の日も、花は変わらなかった。
毎日水切りをして水を替えていたが、5日もすると花はだんだん萎れてきてしまった。

コンスタンスが自ら水を替えようと茎を持って持ち上げると、花びらが一枚落ちた。
そして翌日も一枚、また一枚と落ち、花が届かなくなって1週間過ぎる頃には、バラはとうとう枯れてしまった。

その間オレリアンは全くルーデル公爵家に姿を見せない。
彼はもう、来ないつもりなのかもしれない。

「私がいつまでもお会いしなかったから…、侯爵様もとうとう私をお見限りになったのでしょう」
そう呟く主人に、リアは少しだけ怒ったようにキッパリと言った。

「侯爵様はそんな方ではありません」
「…リア?」

リアは、コンスタンスがオレリアンの話題で頭痛を訴えてから、名前を口にするのは控えてきた。
だが、誤解されたままではあまりにも彼が可哀想だ。

「侯爵様は…、ご自分の話題でお嬢様が頭痛を起こされたと知り、こちらに来るのは控えるようになったのです」
「…そうなの…」

コンスタンスは最後に落ちた花びらを指で拾い上げた。
オレリアンはコンスタンスが頭痛を訴えたせいで、姿を見せなくなっていたのだ。

それまでの2ヶ月間、彼は毎日花を贈ってくれていた。
それなのにコンスタンスはそんな夫に会おうともしなかった。
もちろん、いずれ会わなければいけないとは思っていたが、躊躇していたのだ。
今の、まだフィリップを慕っている自分が夫の存在を受け入れるのは、無理だろうと思われたから。
だったら早く彼を解放してあげなければならないとは思うのにそれさえ放置していたのは、結局今の状況に甘えていたのだろうと思う。
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