7歳の侯爵夫人
でも。
日が経つうちに、私はなんとかこの哀しみから這い出そうと踠き苦しんでもおりました。
やっぱり私は、私を捨て、公のために生きるよう教育されてきた人間なのです。
殿下が国のために隣国との縁談を受け入れたのなら、私もいつまでもこうして我儘を通していてはいけない。
公爵令嬢として王家の命に従い、受け入れなくてはいけないと思い至ったのです。

そうして顔を上げて周りを見回せば、家族や使用人たちが皆私を気遣い、心から心配してくれているのがわかります。
私はそれを、今更ながら申し訳なく思いました。

それと同時に、部屋の窓辺に飾られている一輪の花にも気づきました。
そしてその花が、ヒース侯爵オレリアン様が毎日贈ってくれるものだということも知ったのです。
ヒース侯爵オレリアン様…、私が存在さえ忘れていた夫の名前です。

そうしてやっと顔を上げた時に知らされたのが、フィリップ殿下が私を側妃に望んでいたというお話でした。
それはとても衝撃的なお話でしたが、かえって私は吹っ切れたような気もいたしました。
殿下への思慕と、未練とをです。
ルーデル公爵家の長女として生まれ、末は王妃になるべく教育を受けた私に、あの方は妾になれと言うのです。
誰がそんな屈辱的なお話を受け入れられましょうか。
< 317 / 342 >

この作品をシェア

pagetop