7歳の侯爵夫人

2

あの事故の直後コンスタンスは意識を失ったため、自分が庇ったセリーヌがどうなったか知らない。
「貴女に助けられたおかげで、彼女はかすり傷一つなかったよ」
オレリアンは戸惑いながらそう答えた。

コンスタンスはとりあえずその答えに安堵した。
オレリアンの大切な人を守れたのだ。
そして畳み掛けるように、
「セリーヌ様をお迎えに行かれなくてよろしいのですか?」
とたずねた。
記憶を呼び戻してみても、これまで彼女の影は一切無い。

事故に遭ってからの8ヶ月余り、オレリアンはコンスタンスを連れてヒース領に行ったり、王都では毎日ルーデル公爵邸に通ったりと、コンスタンスに尽くしてきた。
その間、セリーヌは一体どうしていたのだろう。

「私が記憶をなくしてしまったから、またお2人の邪魔をしてしまったのですか?」
そうだ。
きっとコンスタンスが事故に遭ったせいで、また2人が一緒にいられなくなってしまったのだ。
「私のせいで…、」
「違う!」
オレリアンは引き抜かれた妻の手を再び掴んだ。
< 326 / 342 >

この作品をシェア

pagetop