7歳の侯爵夫人
「そんなことが…」
コンスタンスは絶句した。
オレリアンとのすれ違いの陰に義母の思惑があったなんて。
そして自分が記憶を失っている間に、オレリアンはそれを取り除くべく奔走していたなんて。

思えば、王妃の思惑で結婚が決まり、義母の思惑で夫とすれ違い、なんて他人に振り回される結婚生活なのだろうか。
コンスタンスは夫を見つめた。
彼はコンスタンスとの結婚生活を憂いなく送るために義母や元恋人を排除した。
本気でやり直したいと思っていなければ、きっとそんなことはしない。
彼は本気でコンスタンスに償う気なのだ。
でも償いで一生側にいて、果たして彼はそれで幸せなのだろうか?

「オレリアン様」
コンスタンスは夫の手を握り返し、微笑んだ。
「償いはもう、十分にしていただきました。貴方はもう、自由になってもいいのですよ?」

オレリアンは目を見開き、妻を見つめる。
「自由?どういうことだ?それに俺はまだ何も償ってなどいない」
「いいえ、貴方は十分すぎるほど償ってくださいました。7歳の幼女のようになってしまった私に飽きもせずに付き合い、貴方の存在さえ忘れ、冷たく接した16歳の折にも、こんな私に毎日会いに来てくださいました。そして王宮では、王族を敵に回すのも厭わず私を助けてくださいました。もう、十分すぎるほどではありませんか?」

「あれは…、あれは、償いなどではない!」
オレリアンは瞳を潤ませた。
コンスタンスは驚きに目を見開く。
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