7歳の侯爵夫人
ヒース侯爵邸を去る日、あの日コンスタンスは父に一緒に帰ろうと言われ、帰ると即答した。
あの時は見知らぬ年上の夫と暮らすなど、考えられなかったから。
でもコンスタンスがそう答えた時、あの人は僅かに傷ついたような顔をした。

「私の…、旦那様…」
口に出してみると、不思議な感じがした。

王都でのルーデル公爵邸とヒース侯爵邸はわりと近い距離にあるらしく、オレリアンはちょくちょく公爵邸を訪ねてはコンスタンスに面会を申し込んでくる。
だが、相変わらず父はそれを拒み続けている。
たまにはプレゼントのお礼を言いたいと言うコンスタンスに、「そんな必要はない」とか「おまえが気にすることはない」などと言う。

だが、オレリアンからのプレゼントを捨てたりコンスタンスに渡らないようにするようなことはしないところが、父の人が良いところなのだろう。
これ以上オレリアンが娘に接触しようとするならコンスタンスを公爵領に行かせるなどと言っていたが、あれだってどこまで本気なのやら。

ただ、今のコンスタンスならいっそ王都の邸宅より、公爵領に行ってもっと遊び回りたいとも思う。
父の領地には山があったり森があったり湖があったり、遊び場の宝庫だったから。
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