7歳の侯爵夫人
今日もオレリアンはコンスタンスへの面会を申し入れて、門前払いを受けていた。
しかも最近では、訪問するたびに公爵やエリアスからコンスタンスとの離縁を勧められている。

『今のコンスタンスでは、侯爵夫人のつとめは果たせない。いつまでこの状態が続くのか先が見えない今、離縁するのがお互いにとっても一番いいだろう』
と言うのが公爵家側の理由だ。

それを拒否すると、
『君にとってもその方が都合がいいだろう』
とか、
『離縁するからといって持参金を戻せなどとは言わないから』
とか、
『たった1年で離縁して社交界で悪い噂を立てられると気にしているなら大丈夫だ。我が公爵家の威信をかけて噂など払拭してやろう』
などと口々に言われるのだ。

こうして聞くと、コンスタンスがいかに公爵家で愛され、大事に思われているのかよくわかる。
王命だったとは言え、本当は最初からオレリアンに嫁がせるのは意に染まぬことだったのは確かであろう。
コンスタンスが記憶喪失になったことを不幸中の幸いと、もう夫の元に戻す気はこれっぽっちも無いように見える。

だが、オレリアンだとて、今この状態の妻と離縁するなど、人として、騎士として、到底受け入れられないことである。
正直持参金とか、社交界での噂とかはどうでもいいが、せめて本人と直接会って言葉を交わしたいのだ。

しかし、なんとか少しの時間だけでも面会させて欲しいと申し入れたが、やはり今日も願いは叶わず、『お引き取りを』と冷たく言い捨てられてしまった。
< 37 / 342 >

この作品をシェア

pagetop