7歳の侯爵夫人
その時、バンッと部屋のドアが開かれた。

「コンスタンス!」
音がした方に目をやると、背の高い知らない男が自分の名を呼びながら走り寄ってくる。

「コンスタンス!気がついたのか⁈」
まるでリアを押しのけんばかりにベッド脇に立った男に、コンスタンスは怯えた。

「コンスタンス!」
全く知らない男が、自分の顔を覗き込む。

(……怖い)
知らず知らず、体が震え出す。

「…コンスタンス?」
そして男が手を伸ばしてきた時、彼女はとうとう我慢出来なくなってしまった。
触れられないようにその手を避け、しゃくりあげ始める。

「…っうっ、ひっく…っ、うっ…」
「…奥様!」
リアがコンスタンスの体をそっと抱きしめる。
あたたかいその胸に、コンスタンスはしがみついた。

「う、うわーん、あーん」
声をあげて泣き始めたコンスタンスに、その男…、オレリアンは狼狽(うろた)えた。
妻のこんな取り乱した姿を目にしたのは初めてだったから。

だが。
自分を見て怯えるのも、触れられたくないのも、当然のことと言える。
彼女をこんな目に遭わせたのは自分のせいなのだから。

「奥様はまだ混乱しております。
どうか、もう少しそっとしておいてあげてくださいませ」
コンスタンスを抱きしめながら睨むように見上げた侍女に、オレリアンは鷹揚に頷いた。

そして、そっと部屋を出て行ったのだった。
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