7歳の侯爵夫人
やはり…というか、思っていた通り、格下の貴族に嫁いできた誇り高い公爵令嬢は、気高く、優雅で、そして冷たかった。
結婚と引き換えに金と身分を手に入れた夫を蔑んでいるようにも見えた。
あの、エメラルドを思わせる美しい翠眼で。

だからオレリアンは、色欲をまとった義母の目よりもさらに、妻の目が苦手になった。
決して彼女が嫌いなわけではない。
押し付けられた縁談ではあるが彼女自身も被害者で、気の毒だとは思う。
だが、どうしても苦手なのだ。

そしてオレリアンは、結婚後すぐ、妻コンスタンスを王都の侯爵邸ではなく、侯爵領にある別邸に住まわせることにした。
あの義母と妻を同居させたくはなかったからだ。

それに王太子との婚約解消以来社交の場に出ないようになっていた妻にとっては、かえって王都を離れた方が落ち着いて暮らせるだろうとも思った。
まだ騎士団に所属している自分は王都に住んでいるので、事実上の別居婚である。

◇◇◇

「旦那様、遅れますよ」
護衛のダレルに声をかけられ、オレリアンは素っ気なく義母の腕を払った。
ダレルを伴い、侯爵邸を後にする。
今からまた、ルーデル公爵邸を訪問するのだ。

(今日は、会えるだろうか)

オレリアンはエメラルドのような翠色の瞳をキラキラさせていた少女の笑顔を思い出し、知らず知らず、口元を綻ばせていた。
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