7歳の侯爵夫人
オレリアンは笑顔で自分を見上げる妻を、眩しそうに見つめた。
今日も輝く銀色の髪を緩く結んでいるコンスタンスはとても可愛らしく、オレリアンは柵の間から手を伸ばしてその髪先に触れた。

オレリアン自身、どうしてこんなに妻との面会に拘り、拒まれても拒まれても通い続けていたのか説明がつかなかった。
だが、今わかった。
あの、侯爵邸を出る時に彼女が小さく手を振った日から…、多分自分は、彼女のこの目に自分を映して欲しかったのだ。

眩しそうにオレリアンを見上げていたコンスタンスだが、彼女に笑顔を向けていた夫の顔が急に険しくなったので、彼女はその目線を辿って後ろを振り返った。
すると、彼女の後ろには息を切らせている兄エリアスが立っている。

エリアスは
「…どういうことだ…」
と言ってオレリアンを睨んだ。
だって、おかしいではないか。
ずっと面会を拒んでいたはずなのに、何故妹はこの男にこんなに懐いているのだ?
何故2人とも、こんなに甘い雰囲気を漂わせているのだ?

エリアスに睨まれたオレリアンは、居住まいを正し、軽く頭を下げた。

「義兄上、今日はどうしても聞いていただきたいことがございます」
オレリアンは頭を上げると、真っ直ぐにエリアスを見つめた。
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