7歳の侯爵夫人
俺はたしかに彼女を愛していた。
彼女も俺を愛していると思っていた。

騎士として功績を挙げたかったのも、伯爵家に養子に入ったのも、セリーヌと結婚したかったからだった。
当然彼女は、そんな俺を信じて待ってくれているとばかり思っていた。
彼女との小さなすれ違いなど、仕事や勉強が一段落すればなんとでもなると思っていたのだ。

『待て待てってそればかり。あなたを待ってるうちに、私はおばあさんになっちゃうわ』
別れ話をされた時、彼女にそんなことも言われた。

結局は、裏で義母が小細工しようと、彼女の気持ちが離れていったのは俺自身に問題があったのだろう。

恋を失った俺は、それまで以上に仕事に没頭した。
義母はさらに鬱陶しくなったが、元伯爵夫人で現在もいちおう伯爵家の女主人である義母を簡単に追い出すことは出来ない。
だが、俺がもっと力をつけて名実共に伯爵家の当主になったら…。

そうして騎士の仕事と領地経営に没頭していた俺に突然縁談が降って湧いたのは、セリーヌと破局して3ヶ月も経たない頃だった。
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