7歳の侯爵夫人

3

初めてルーデル公爵令嬢コンスタンスときちんと会ったのは、俺が公爵家を訪ねた時である。
もう王家から縁談を持ち込まれた時点で断るという選択肢はなく、すでに事実上の婚約者である彼女と俺の顔合わせの席であった。

騎士である俺はあの舞踏会以降も夜会などがあると王宮の警護にあたっていたので、フィリップ殿下にエスコートされているコンスタンスをたびたび目にしていた。
当時の俺にとって彼女は警護対象の1人であり、当然何の感情もない。
未来の王妃であり、一介の騎士でしかない自分とはおそらく一生口を利くこともないような雲の上の存在だったから。
王太子の傍らに立ち、ずっとその口元に微笑みを浮かべている彼女は、この国を代表する、完璧な貴婦人として俺の目には写っていた。

コンスタンスの方も時々見かける程度には俺の顔を知っていたかもしれない。
ただ、当然名も知らぬ、その他大勢の騎士の1人として。
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