許されるなら一度だけ恋を…
そして水族館に着き、車から降りる。水族館に来たのは子供の頃以来だ。

館内に入ると、昔見た景色とは全然違う。鑑賞できる魚の種類も増えているし、薄暗い館内も絶妙なライトアップで幻想的な世界に変わっていた。

そしてアトラクションも満載で、私は時間を忘れて奏多さんと水族館を楽しんだ。

夜になってまたフラワーパークへ戻ると、彩られたライトアップで昼間とは全く違う雰囲気に変わっていた。

「綺麗やな」

「そうですね」

「でも冬になるともっと凄いイルミネーションが見れるんやて。楽しみやな」

冬もまた奏多さんと一緒にここに来れますように……

私は光り輝く花達に、心の中でそっと願掛けをしてフラワーパークを後にした。

「奏多さん、今日は楽しかったです。ありがとうございました」

「俺もたくさん桜と居れて嬉しかったわ」

そしてあっという間に華月家に着いてしまった。正直、名残惜しい。

「桜」

「はい」

呼ばれて運転席の方に顔を向けると、奏多さんは私を引き寄せてキスをした。

その触れた唇はすぐに離れ、奏多さんは私の手のひらに何かを乗せる。

「……鍵?」

「それ俺の家の合鍵。勝手に家に入っていいから。電話で話すのもいいけどやっぱり会いたくなるし、たまには仕事帰りに家に寄って欲しいかなって。あかん?」

「あかん……くないです」

私は渡された合鍵をギュッと握りしめてはにかむ。
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